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万物の眠り、大地の血管

2018, 2020-2021,

Sleep of all things, vessels of the Earth

空間作品サイズ: 458 x 1040 x h 490 cm
素材 : 珊瑚、貝、石、木、布、紙、アクリル、ジェッソ、油性色鉛筆、ダーマート、スプレーカラー、ラッカー、米粉、稲穂

Exhibition "メイド・イン・フチュウ 公開制作の20年" 府中市美術館

Exhibition View

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    全撮影: 千賀健二

    Text: 描かれた“大きな身体”

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      府中市美術館では、公開制作室の期間中、来場者の皆さんに制作過程をお見せしながら、床や壁、空間全体を使って“大きな身体”を描いていきました。

      その“大きな身体”の首からは稲穂が生え、骨格のあちこちからは植物が生え、手は水となり、腰から下は木々へと接続しています。そして、木々はまた鉱物へと変化を遂げ、そこに生命が芽生え、空間全体で新しい生態系を生み出しています。

      この身体のイメージの源の一つとなったのは「船津胎内樹型」と呼ばれる山梨県にある洞窟です。
      船津胎内樹型は倒れた樹木にマグマが覆い被さり、その後マグマが冷え、樹が朽ちることによって、洞窟化したものだと言われています。

      その内洞は、焼失した樹の表皮によってしっかりと象られ、形状はまるで肋骨のようでもあり、内臓のひだのようでもあります。

      この船津胎内樹型では、洞窟を胎内に見立て、そこを歩いて通ることによって生まれ変わりを経験する「胎内巡り」という修行が、富士信仰の一環として江戸時代より行われていたそうです。

      そうした船津胎内樹型に着想を得て作り出した“大きな身体”の中には、火山石や珊瑚、貝などが置いてあります。

      各所に配置されたパーツたちは時折、来場した鑑賞者たちの手によって動かされていきました。私のドローイングもまた、動くパーツに呼応するように、私の意識の外側へと伸びていきました。

      ある時などは子ども達がほんの少しの時間に、“大きな身体”の背骨の中に置いてあった珊瑚や貝を、身体の手の方へとすべて移動させてしまいました。そこで、私はその手を“水の手”として描くことにしました。

      また、パーツの中には四角い30cmのキャンバスに描かれた絵画もあり、その絵画もまた運動していました。フレームの中から外へと向かって成長していくイメージが、ドローイングによって実際の空間の中へとどんどん広がっていったのです。公開制作には、人に見られているという緊張感もあれば、いつも以上に時間の制約もありますが、そうした生々しい現場感に突き動かされて、自分の身体を超えて線が伸びていくような面白さがあります。

      この展示では、私が海洋調査船タラ号の船上から撮影した、白い鯨の死骸が様々な生物に食べられている光景を含む映像作品も公開しました。他の生命に食べられることで大海へと溶け込んでいく白い鯨の身体に、公開制作室いっぱいに広がる“大きな身体”の中へと溶け込んでいく私たちの“小さな身体”が重なります。

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