| 1.3.2025

追伸

そうそう、書き忘れるところだった。僕たちに子供が生まれたんだ。チアパス生まれのメキシコ人だよ。僕たちはメキシコ人の親になったんだ。

出産の瞬間はとても感動的だったよ。赤子が産まれ出る寸前、膣口の周辺がまるで隆起する火山のように盛り上がってね、次の瞬間、血に染まった裂け目から大量の羊水と一緒に赤子が飛び出してきたんだ。それはまさに噴火だった。母体と大地のアナロジーは普遍的だけど、あれを見て納得がいったよ。

子育ては大変だけど、学ぶことも多いよ。実際、あることに気づいたんだ。赤子って理不尽に泣くでしょう? 眠いとか、お腹が空いてるとか、なんか不愉快だとか、赤子にも色々あるんだろうけど、こっちからしたら泣いてる理由なんてまるで分からない。そういう時、僕らは赤子を抱き上げて、その身を揺らしながら、歌いかけたり踊ったりするんだ。それでもダメな時は乳をあげる。産まれてからしばらくは毎日そんな感じだったんだけど、ある時にハッと気づいたんだ。これって全て僕らがお祭りや儀礼で行ってきたことだよなって。歌い、踊り、担ぎ、そして供物を捧げる。これらはいずれも普遍的な祈りの行為そのものなんだよ。

それで思ったんだ。そうか、僕らはずっと荒ぶる世界をあやそうとしてきたんだなって。お願いだから泣き止んでください、少しの間でいいから鎮まってくださいってね。そう考えてみるとこの世界ってなんだか滑稽で、面白く思えてはこないかな?

 

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© 2025 Maki Ohkojima